ぬ え 塚


ぬえ塚
芦屋市浜芦屋町5  撮影:1999年11月2日

鵺塚橋(ぬえづかばし)
芦屋市松浜町4より  撮影:1999年11月13日

川原に降りる階段が見える
芦屋市平田町5  撮影:1999年12月3日


 その昔、近衛天皇(1151-1154)の御代、源頼政(1104 - 1180)って人が都は宮中の二条院で“ヌエ”という怪獣を「弓張り月」なる強弓で射落としたという。
ぬえ 頼政が射落としたヌエは頭がサル、体はタヌキ、手足はトラで尾はヘビ。また、鳴き声はトラツグミに似てたとか。平家物語にこんな風に書いてあるそうだ。

 射落としたって表現だから翼があるのかと思ったけど、そうでもないらしい。けど、タヌキの体で飛んだり木の上に登ったり雲に乗ったりは、かなり辛いもんがあるだろうな。(爆)
 ギリシャ神話のキメラ(キマイラ)とよく似てる。キメラは頭はライオンで体がヤギ、シッポは日本のヌエと同じくヘビ(あるいはドラゴン)だったそうだ。鳴き声は知らないけど、口から火を吐くことになってる。キメラよりヌエの方が人間っぽい感じがするけど、同族かも知れないな。(笑) ちなみに、キメラ(キマイラ)は女性名詞だから雌なんだろうな。

源頼政のつもりで描いたけど、本当にこんな顔してたかは責任持たない
源頼政 風
 で、その頼政が退治したヌエなんだけど、なんと死骸が芦屋に流れ着いたんだそうだ。退治したヌエは小舟に乗せて桂川に流したそうだから、桂川から淀川を流れ下って大阪湾に出て、芦屋の浜に打ち上げられたんだろうね。…知らないけど。^^;
 けど、今だったら不法投棄で怒られるぞ。ヘンなもん川に捨てるなよ。公害問題だ。芦屋市役所から京都市役所経由でモンクが来るぞ。よい子は真似しないように。(爆)

 ま、ともかくたたりを恐れた芦屋の村人は塚を造ってヌエを葬ったそうだ。その碑が阪神・芦屋駅の南、芦屋川東岸の芦屋公園にある。“ぬゑ塚”って書いてある。もちろん、碑は後代に作られたものだ。確か、大正時代に作られたって聞いた。
 もともと“ぬえ塚”は別の場所にあって、それがいつだったかに今の場所に移された、と聞いた覚えがあるけど、あやふやだ。

 その“ぬえ塚”の近くに芦屋川に掛かる一番南の橋「鵺塚橋(ぬえづかばし)」がある。「鵺塚橋」はなにもヌエを葬った記念に掛けた橋じゃなく、大正の初めに掛けられたって聞く。
 この橋が出来るまで、平田町南部の人たちは、今の国道43号線のあたりにあった永保橋を渡るか、階段を降りて川原を渡るかしか、対岸に行く方法がなかったそうだ。
 昔、親戚の家に行くとき、鵺塚橋を通ったんだけど字が難しくて読めなかったぞ。今の橋は3代目くらいじゃないだろうか? 以前は木の橋だったように思う。…白のペンキ塗りだったかも知れない。

 面白いことに、“ぬえ塚”はもう一つある。場所は大阪市都島区都島本通の桜通り商店街のはずれだ。やっぱり、小舟に乗せて流されたヌエが漂着して葬られたってことになってる。確かに「平家物語」では、頼政はヌエを2度退治してることになってる。

 なお、静岡県 田方郡 伊豆長岡町 の伊豆長岡温泉の3大祭りの一つとして、「鵺(ぬえ)ばらい祭」が毎年1月28日に福を招く新年の厄払い行事として行われてる。
 祭りの由来は、源頼政がヌエを射ち取り、伊豆長岡町古奈出身の“あやめ御前”と結ばれたという故事からだそうだ。

 それにしても、ヌエってわざわざ漢字まであって、ワープロやパソコンで“鵺”(文字コード EA4B)なんて、ちゃんと出てくるあたりすごいと思う。(笑)
 その後、ある方から「ヌエと言うのはトラツグミの古名あるいは別名・異名」と教わった。つまり“鵺”とは鳥の名前なんだね。頼政の退治した怪物がヌエと呼ばれるのは、正体は不明だけど鳴き声がヌエ(つまりトラツグミ)に似ているから、と言うことになりそうだ。


芦屋公園
芦屋市浜芦屋町5  撮影:1999年11月13日


 ところで、ぬえ塚のある辺りの芦屋川東岸は、上にも書いたとおり芦屋公園という。松林の公園があって、その南にテニスコートがあって、更に南にまた松林がある。

 昭和の初め頃、芦屋名物は「松と犬とお手伝いさん」と言われたくらい、庭木なんかにも松の木が多い。

 芦屋に松が多いのは、その土質と関係があるんだ。芦屋川や宮川がたびたび氾濫をおこして、その度に山土を持ってくる。おかげで芦屋、特に芦屋川沿いは土砂混じりの栄養のない土になってしまった。だから、やせ地にも生える松が多くなってしまったのだ。ちなみに芦屋市の木は黒松だ。

 本来、この辺りはシイとかブナの照葉樹林だったはずだ。あまり水害に遭ってない、しかも人の手のはいってない会下山遺跡の辺りを見ればそれが判る。また、水害の被害が少なかったと思われる高台の岩園町六麓荘町の辺りも松以外の木がたくさん生えてる。





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