弁天岩とフカ切り岩


弁天岩
芦屋市奥山  撮影:1999年12月22日

フカ切り岩
芦屋市奥山  撮影:1999年12月22日

フカ切り岩と弁天岩付近の地図
(芦屋市広報課発行「プロムナード芦屋」裏面の「芦屋市全図」より)


 弁天岩のところには、その昔、水神社があった。“フカ切り”の伝説の残る由緒ある神社だったんだけど、明治政府の一村一神社政策で今は芦屋神社の境内に他の神さまと合祀されてる。


 その昔、長く干ばつが続いたとき、芦屋の住民は雨乞いをしたけど一向に効き目がない。そこで勇徳院彦兵衛という山伏に雨乞いを頼むことにした。
 まず、村人は芦屋沖でフカ(鮫)をつかまえ、滝の近くの平らな石にそのフカを据えた。彦兵衛は断食をして三日三晩祈り続け、三日目の夜に大きな包丁でフカを突き刺し、その血を水神さまの祀ってある弁天岩に振りかけた。

 するとたちまち六甲の山に黒雲が沸き上がり大雨が降りだしたというのだ。水神さまは弁天岩の汚れた血を洗い流すために大雨を降らせた言われる。

 彦兵衛がフカを刺した“フカ切り岩”と呼ばれる平らな岩は芦屋川の上流にある。その後も干ばつの時は、たびたびここで“フカ切り”が行われたそうだ。

 それにしても、芦屋の浜からフカ切り岩までは 4km はたっぷりあるだろう。しかも、かなり険しい道だ。フカを運ぶのは結構辛いものがあったろうな。

 干ばつの時の雨乞いって、たぶん夏だよね? 鮫を岩の上に三日も置いて…。おそらくほとんど腐ってたと思う。弁天岩も水神さまもさぞ臭くて面食らったろうな。あそうか、臭くてたまらないから雨で流そうとしたのか。(笑)

 芦屋は芦屋川の氾濫などで、土砂混じりの田畑が多く、干ばつの被害は極めて深刻だった。このために、芦屋川などの水利争うがたびたび起こったりしてる。だからひどい干ばつだったりしたら必死で雨乞いやったんだろう。


 ところで、弁天岩とフカ切り岩は芦有ドライブウェイに通じる道から見えるって話なんで見に行った。
 弁天岩は連続したヘアピンカーブの途中、道に迫り出すようにある。どのへんが弁天さまなのだかよく判らないけど、なんか丸っこい感じのする岩だ。

 フカ切り岩は弁天岩から100mほど北のヘアピンカーブから奥池へのハイキングコースに入ったところにある。小さな滝の上、つまりちょっとした崖の上だ。こんなところで夜中にフカを切るのは結構危険だぞ。(笑)

 なお、弁天岩とフカ切り岩のあるところは連続したヘアピンカーブの途中で、しかもかなりの急坂だから、車を停めての見物なんて出来ない。両方とも“フカ切り岩”とか“弁天岩”なんて立て札がないので、それと知らないと判らない。最初に行った時、一つ下のヘアピンカーブの辺りを捜してて、いくらしても見つからなかった。(笑)

 もう少し季節のいい時に来ればよかったんだけど、行った日は12月も22日だ。弁天岩とフカ切り岩の辺りは日が差してるのに粉雪が舞ってた。海抜300mほどで、高座の滝より更に 1km ほど北のこの辺まで来ると下界とはずいぶん気候が違う。






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